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保育コラム

  • 更新日:2024年11月13日
  • 公開日:2024年10月31日

認可保育園・認定こども園・幼稚園に対する指導監査について解説

認可保育園・認定こども園・幼稚園に対する指導監査

1. 指導監査の目的と根拠法

指導監査とは、保育園に対して法令等を遵守していることを確認するため定期的に行われるチェックのことです。
設備・運営基準等の実施状況が、関係法令等に照らし適正に実施されているかどうかを個別的に詳らかにし、必要な助言・勧告又は是正の措置を講ずることなどにより、各施設及び事業の適正かつ円滑なる実施を確保しようとするものです。
関連する法制度としては、「児童福祉法第46条」「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律第19条」があります。

また平成27年4月に施行された「子ども・子育て支援新制度」によって、特定保育・教育施設(認可保育園・認定こども園・新制度幼稚園)に対し施設型給付費等が支給されるようになったことに伴い、子ども・子育て支援法を根拠として、支給の適正化を図り、「確認」に関する基準を満たしているか確認しています。

根拠となる法律

2. 指導監査の実施方針

指導監査は、各関係法令、及び実施主体となる各自治体の基準に照らした検査を軸に行われます。また法令や基準等の変更、時代のニーズに合わせた重点事項を踏まえ実施されることも注意が必要です。

最近では、不適切保育や保育中の事故などを受け、子どもの安全管理や保育の質向上などの観点を重点事項として検査が行われる傾向にあります。
安全計画の策定状況の確認、ヒヤリハット報告書や事故報告書の確認と再発防止に向けた対策の実施状況などが重点的にチェックされています。

3. 指導監査の種類

指導監査には「施設監査」と「確認指導監査」の2種類があります。

2種類の監査

A. 施設監査(認可に基づく指導監査)

施設監査には、「一般指導監査」と「特別指導監査」があります。
施設監査は従来から行われていた監査で、都道府県及び指定都市・中核市によって、児童福祉法第46条または就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律第19条に基づき、実施されます。

一般指導監査(定期的に実施)

一般指導監査は、すべての認可施設に対して定期的に実施される指導監査です。
毎年1回、2年に1回、5年に1回など自治体ごとで実施のタイミングが異なります。
管轄の自治体ホームページなどで是非確認してください。

特別指導監査(随時実施)

特別指導監査は運営等に重大な問題を有する場合に随時実施されます。
主に、基準違反が疑われる場合、一般監査による指摘事項等への改善が見られない場合、一般指導監査を正当な理由なく拒否した場合などに実施されます

B. 確認指導監査(子ども・子育て支援法に基づく特定教育・保育施設への確認指導監査)

確認指導監査には、「集団指導」と「実地指導」があります。
区市町村によって、子ども・子育支援法に基づき、「確認」に関する基準を満たしているかチェックされます。

※平成27年4月に施行された子ども・子育て支援新制度によって、特定保育・教育施設(認可保育園・認定こども園・新制度幼稚園)に対し施設型給付費等が支給されるようになったことに伴い、実施主体である区市町村による指導及び確認監査が実施されるようになりました。

集団指導(講習会などの形式)

法令や各種基準についての周知徹底の必要性があると判断された場合に、事業者を集め、講習会などの実施によって行います。
新規開園した施設の場合はおおむね1年以内、既存の施設の場合には必要と判断した場合に実施されます。

実地指導(実施指導や書面)

区市町村の判断により随時実施されます。3年に1回の実施、5年に1回の実施、実施指導を行わない年度は書面による指導監査を実施するなど、自治体ごとで実施のスタイルが異なるようです。管轄の自治体ホームページなどで是非確認してください。

4. 指導監査の実施主体

職員たち

認可に基づく「指導監査」は都道府県及び指定都市・中核市によって、子ども・子育て支援法に基づく特定教育・保育施設への「確認指導監査」は区市町村によって実施されます。
タイミングによっては両者が調整し、合同で実施する場合もあります。

5. 指導監査の基準や着眼点

自治体ごとにホームページ等で指導監査に関する概要や実施方針、監査基準等を公開していますので、是非チェックしてください。
特に監査基準については、自治体ごと、施設の種類ごとに着眼点や基準が微妙に異なります。

例えば、東京都では0~1歳児について毎日の個人別記録を義務規定として要求していますが、他の自治体では要求していません。
また、横浜市は指導計画の「ねらい」及び「内容」について、必ず「養護」と「教育」の視点で書き分けることが要求されています。

6. 指導監査の評価区分

評価区分

C:文書指摘

福祉関係法令及び福祉関係通達等に違反する場合(軽微な違反の場合を除く。)は、原則として、「文書指摘」とする。
ただし、改善中の場合、特別な事情により改善が遅延している場合等は、「口頭指導」とすることができる。

B:口頭指導

福祉関係法令以外の関係法令又はその他の通達等に違反する場合は、原則として、「口頭指導」とする。
ただし、管理運営上支障が大きいと認められる場合又は正当な理由なく改善を怠っている場合は、「文書指摘」とする。
なお、福祉関係法令及び福祉関係通達等に違反する場合であっても、軽微な違反の場合に限り、「口頭指導」とすることができる。

A:助言指導

法令及び通達等のいずれにも適合する場合は、水準向上のための「助言指導」を行う。

7. 監査の流れ

STEP

(1) 監査実施通知の送付

監査実施の一定期間前までに、監査実施通知が送付されてきます。
通知のタイミング等は自治体ごとで異なります。
また、特別監査の実施対象となる場合には、事前通知がなされませんのでご注意ください。

(2) 事前書類の提出

監査実施の一定期間前までに、指定された事前提出書類を提出します。
事前に提出した書類は監査当日までにチェックされ、指摘や助言対象となる箇所については監査当日の重点的な確認ポイントとなります。
事前書類提出の必要可否、提出する場合の期限等については自治体ごとで異なります。

(3) 指導監査当日の動き

一日監査の場合、朝は10時から夕方17時ころまで丸一日の長丁場となります。
状況にもよりますが、18~19時までかかる場合もあります。

タイムスケジュール例

10:00~ 挨拶・自己紹介
園の概要の紹介
(理念や方針、大切にしている保育の内容、職員数、在園児数など)
運営、会計、保育内容別に、書類等の確認開始
(途中、年齢クラスごとのタイミングで食事提供の様子の実地確認)
12:00~ 昼食休憩
13:00~ 運営、会計、保育内容別に、書類等の確認再開
(途中、午睡、おやつ状況の実地確認)
16:30~ 講評内容のとりまとめ
17:00~ 結果の講評

(4) 監査当日の結果の講評

運営、会計、保育内容、それぞれごとの監査結果について講評が行われます。
監査基準に沿って、「文章指摘」「口頭指導」「助言指導」のいずれかに該当するものがある場合、それらの内容について説明が行われます。

(5) 監査結果通知書の送付

指導監査の後、改善が求められる箇所のあるなしに関わらず、指導監査の結果は正式な文章として通知されます。
最近ではメール添付で送付されることが多いようです。

(6) 改善報告の提出

監査結果通知書で指摘された事項について、期限内に改善状況の確認が出来る資料や改善計画等を提出します。

(7) 勧告と命令、認可の取り消しなど

監査の結果、基準違反が確認された場合、基準の順守に向けた勧告がなされます。
更に勧告の結果、正当な理由なく勧告に従わない場合、改善命令がなされます。
改善が見られない場合には、事業停止命令や認可取り消し、確認取り消しもあり得ますので早急な対処が必要です。

(8) 監査結果の公開

監査結果通知書の送付、改善報告の提出が完了した後、各自治体のホームページ等で文章指摘事項の内容やその改善状況等について公開されます。

8. 指摘事項になり得る事例

・消火、防犯、避難等の訓練を行っていない。
・教育、保育内容の自己評価を行っていない。
・全体的な計画の立案がない。
・短期的な指導計画の立案がない。
・要配慮児への個別指導案が立案されていない。
・3歳未満児への個別指導案の立案がない。
・運営規定の記載内容に不足や誤りがある。
・重要事項説明書の記載内容に不足や誤りがある。
・重要事項の周知を行っていない。
・苦情解決の窓口の設置等が行われていない。
・保育に関する記録がない。
・有資格者の配置数が不足している。
・事故防止等のマニュアルが整備されていない。
・施設長が長期間に渡って出勤していない。

9. 監査当日の対応のアドバイス(特に保育内容)

監査は保育を良くしていく為の対話の時間です!
監査官の方々も、素晴らしい取り組みは率直に評価してくださいますし、もっと保育を良くしていこうという熱意と一緒にお越しくださっていることを是非忘れないでください。

保育内容について言えば、計画類が立案されていない、あるいは一切記録の類を書いていないといった余程のことが無い限り文章指摘や口頭指導の対象となることはないと思っています。
とは言え、監査されるという立場は受け身的ですし、日頃の取り組みが評価されると思うと緊張するものです。
そこで、以下の心構えと対応策を念頭に監査官と臆せず議論して頂きたいと思います。

監査官の語尾に注意!

「~した方がいいよ」「~するともっと良くなる」のような言い回しは「助言」です。口頭指導ではないので、修正するかは園の自由です。
ただし、「~してください」は口頭指導となりますので、修正が必要です。
是非、監査官の語尾に注意して頂き、曖昧な場合にはその場で「助言」「口頭指導」のどちらにあたるのかを明確に確認してください。

口頭指導として確認されたら

「~してください」のように口頭指導として意見された場合には、その根拠法令等もしっかり確認してください。
監査官がその場で根拠法令の回答ができない場合には、持ち帰ってもらい後日回答を促しましょう。
(これまでにこのようなやり取りを何度となく経験しておりますが、ほぼ9割の確率で助言へと修正されました)

10. 監査対応一問一答

Q&A

この一問一答は、これまで弊社が監査に関わる中で疑義が生じた内容について、各自治体の担当者様から直接ご回答頂いたものを要約してご紹介しています。
自治体によって解釈が異なるものもあると思いますので、参考までにお役立てください。
また、今後弊社で確認できたものは随時更新していきます。

全体的な計画で必ずおさえるべき項目は何?

(東京都福祉保健局 保育指導監査課様よりご回答)
全体的な計画は、解説書の通り、第1章2及び4、第2章に基づいて構成されることと示されているのみであって、検査基準上も必ず立てなければならない項目など細かな要件はありません。従いまして、基本的には施設ごとの裁量で表現してください。
時事的なトピックで、例えば「災害への備え」などもあるに越したことはありませんが、それがないから不足しているということではありません。
なお、あえて項目化すべきものを挙げるなら、保育所保育指針等の章立ての項目がベースになっていることが望ましいと思います。

書類に印鑑は必要?

(東京都福祉保健局 保育指導監査課様よりご回答)
印鑑が必ず必要な書類は、財務に関する書類ということになっていますので、保育内容に関する書類上では押印は必須ではありません。
例えば指導計画などでPDCAサイクルが回っているのかを別の方法で確認することができれば押印、あるいは署名等が無くても問題ありません。
恐らくは、別の方法を示される方がお手間かと思いますので、その場合は押印、あるいは署名をもってPDCAがサイクルしている証明として捉えております。

延長保育日誌は必要?

(横浜市こども青少年局 監査課様よりご回答)
延長保育日誌は必要です。
根拠法は、「横浜市特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業の運営の基準に関する条例」の12条です。
(特定教育・保育の提供の記録 第12条 特定教育・保育施設は、特定教育・保育を提供した際は、提供日、内容その他必要な事項を記録しなければならない。)

児童票(保育の経過記録)は毎月作成する必要がある?

(東京都福祉保健局 保育指導監査課様よりご回答)
毎月、あるいは3か月ごとに作成しなければならないといった規定はありません。
発達段階ごと、あるいは成長を感じた毎に適宜記入してください、といったニュアンスです。

障害児の毎日の個人記録は必要?

(横浜市こども青少年局 監査課様よりご回答)
障害児の毎日の個人記録は必須です。
根拠法は、横浜市障害児等の保育・教育実施要綱第15条の1です。

午睡チェック表に確認印は必要?

(東京都福祉保健局 保育指導監査課様よりご回答)
承認(確認)印は必要ありません。
ただし、誰が午睡確認をし、チェックしたのかがわかるようにしておいてください。

幼児の午睡チェックは必要?

(葛飾区子育て支援課様よりご回答)
見回りは求めているが、記録やチェック表までは厳密には要求していません。(無いとダメということではありません)
しかし、20〜30分おきのチェックの記録を推奨しているというニュアンスです。

子ども一人一人の食事の摂取量の記録は必要?

(葛飾区保健所様よりご回答)
健康増進法施行規則第9条2項の中に、食事の摂取量に配慮して〜とありますので、最低でも年に1回程度は、摂取量の把握をしてください。もちろん、記録として残す必要があります。

(根拠法)
 ・健康増進法 第21条3項 
  三 特定給食施設の設置者は、前二項に定めるもののほか、厚生労働省令で定める基準に従って、適切な栄養管理を行わなければならない。

 ・健康増進法施行規則 第9条2項
  第九条 法第二十一条第三項の厚生労働省令で定める基準は、次のとおりとする。
  二 食事の献立は、身体の状況等のほか、利用者の日常の食事の摂取量、嗜好等に配慮して作成するよう努めること。

保健計画に評価反省欄は必須?

(愛媛県松山市保育・幼稚園課様よりご回答) 
指針にもある通り保健計画の立案は求めていますが、評価反省欄の設置は必須ではありません。計画を年齢別に作成すべきか等の内容の記載の仕方については、特段のルールはありません。

(東京都福祉保健局 保育指導監査課様よりご回答)
評価反省欄を積極的に求めていませんが、保健に関するPDCAが回っているかの確認は必要ですので、保健計画に対する振り返りや見直しをどのように行っているのか監査の際に口頭でも構いませんのでお知らせください。

安全計画に評価反省欄は必須?

(東京都福祉保健局 保育指導監査課様よりご回答)
安全計画そのものに対する評価反省までは求めていませんが、付随する各種マニュアル類の見直し、各種活動のスケジュールなどについてよく管理してください。

食育計画は年齢別に立案する必要はある?評価反省はどの程度必要?

(仙台市様よりご回答)
結論としては、監査基準上は細かな要件はありません。
従って、「食育計画」を園全体として立案しても、年齢別に立案しても差し支えありません。
年間通じた期ごと、あるいは月ごとの計画であるべきかといった指定もありません。
評価反省も、月単位、期単位、あるいは年間で1回の振り返りでも、いずれでも特に問題はありません。また、その振り返りを年齢別にしなければならないとった規定も現時点ではありません。

11. 最近の監査の様子と傾向

東京都などは、監査官が全員、タブレットを持っておられ、その場で確認事項をタブレットに打ち込んで記録するようになりました。
また、以前は書類等をチェックしながら、その場で気になる箇所や助言対象となる箇所について質問や意見を出されていたので、随時のやり取りができたのですが、最近では書類のチェックの段階では何も発言されずに講評の時点でまとめて助言されることが増えてきた印象があります。
恐らく監査に要する時間の短縮化などが理由と思います。

でもご安心を!
講評の段階で納得のいかない助言等が出された場合には、後日、関係部署にお問合せを頂き、口頭指導か否かの確認、口頭指導の場合には根拠法令の確認を行ってください。
なお、ChildCareWebご導入園様につきましては、自治体様への質問代行なども行っております。ご不明な点などございましたらお気軽にお問合せください。