ご挨拶

ごあいさつ

令和という新たな元号に変わり、今後日本が、あるいは国際社会が直面する様々な課題に思いを巡らせてみると、市民性教育(citizenship education)という概念について今一度丁寧に受け止め、その理解を深めていくことが重要であるように思います。
もともと欧州の歴史的・社会的文脈の中で深められてきた概念であることから、明確な輪郭が捉えにくく、また時代や社会状況によってもその定義が異なるために厳密には概念規定することが困難なもののようですが、「参加」というキーワードによって、それぞれの捉え方に幾ばくかの共通点が見えてきます。これは政治的な参加のみならず、経済的活動への参加も含めたもので、批判的思考力、問題解決能力を持ち、能動的・積極的・活動的に民主的参加をなしうる市民の育成、またそうした社会参加のあり方への多様性の模索といったものです。
近代の国家では政治の規模も大きくなり、選挙における投票以外での参政の手立てすら失われつつあり、官僚制の肥大化、行政国家化、ひいては民主政治の本義すら劣化しかねない現状にあります。

こうした背景や概念理解を前提に、「保育」「幼児教育」というコンテキストの中で「能動的な市民の育成」を目指した時、何が重要になってくるのでしょうか。
「教育」を知の再生産、パッケージ化された知識の伝達行為として捉えるのではなく、「学び」とは開放的で能動的な活動への参加を通じて形づくられ、そうした現実の経験の中の解釈によって進化していくものだと考えた時、その中枢となる最も重要な行為は「対話」になるのではないでしょうか。
言語的な対話、非言語的な対話、他者の思考に耳をすますこと、その存在をただひたすらに感じること、様々な「対話」。あらゆる存在を尊重し、重んじる姿勢。大小や上下といった規制の概念に捕らわれない、存在そのものの他性を肯定する姿勢。

目まぐるしい変革の日々の中で、合理化や効率化がもてはやされていますが、ステレオタイプな、子どもを鋳型にはめるような大人の姿がそこにあるのではなく、子どもも保育者も家族も、生活に参加する全ての人々がフラットな立ち位置で対話し、相互に学び合えるような、全ての市民に開かれた「保育」「幼児教育」の文化がここ日本においても醸成されていくことを願ってやみません。

ChildCareWeb有限会社
代表取締役  保坂 佳一