- 更新日:2024年11月26日
- 公開日:2024年11月20日
保育士の配置基準について解説
保育士の配置基準とは
保育士の配置基準とは、保育施設で園児を安全に保育し、保育の質を確保するために、園児の人数に対して最低限必要とされる保育士の人数を定めた基準を指します。この基準は、子どもの年齢や保育施設の種別に応じて異なり、厚生労働省が「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(第33条)」に基づいて具体的な人数を規定しています。配置基準を遵守することは、保育施設の運営において必要不可欠な要件の一つとされています。
配置基準を満たさない場合どうなるか
保育士の配置基準を満たしていない場合、法令違反となり、保育園の運営が困難になります。認可保育園では、年に一度、基準が守られているかを確認するための立ち入り調査が行われます。この調査で基準を満たしていないことが発覚した場合、改善指導や閉鎖命令に至る可能性があり、自治体によっては基準や対応段階が異なる場合もあります。
配置基準の違反は保育の質を低下させる恐れがあり、行政から改善勧告や業務停止命令などの処分を受けることがあります。改善が見られない場合、運営法人名が公開されるほか、業務停止命令や認可の取り消しが行われる可能性もあります。さらに、どうしても基準を満たせない場合には、施設長が保育に入る必要が生じることもあり、その際には委託費が減額されるペナルティが科せられることもあります。
現在の配置基準
0歳児:3人につき保育士1人以上
1歳児:6人つき保育士1人以上
※2025年度以降に6人→5人に変更予定
2歳児:6人つき保育士1人以上
3歳児:15人つき保育士1人以上
※2024年10月1日から20人→15人に変更
4歳児:25人つき保育士1人以上
※2024年10月1日から30人→25人に変更
5歳児:25人つき保育士1人以上
※2024年10月1日から30人→25人に変更
幼保連携型認定こども園
幼保連携型認定こども園とは
幼保連携型認定こども園は、幼稚園と保育園の機能を兼ね備えた施設で、小学校就学前の子どもを対象に教育と保育を一体的に提供します。この施設は2015年に施行された「子ども・子育て支援新制度」に基づいて設立され、「学校および児童福祉施設」として法的に位置づけられています。特に満3歳以上の子どもについては、専任の保育教諭が1人配置され、学級編成が行われることが求められています。
配置基準
職員の配置基準は子どもの年齢ごとに異なり、以下の基準に基づいて必要な職員数が定められています。
0歳児:3人につき職員1人
1・2歳児:6人につき職員1人
3歳児:15人につき職員1人
4・5歳児:25人につき職員1人
地域型保育事業 小規模保育事業 A/B型
地域型保育事業 小規模保育事業 A/B型とは
小規模保育事業にはA型とB型があり、それぞれの職員配置基準や資格要件に違いがあります。
A型:保育所分園やミニ保育所に似た形態で、職員は全員が保育士資格を有することが求められます。また、認可保育園の配置基準よりも保育士を1名多く配置するよう定められており、0歳児は3人に対して保育士1人、1~2歳児は6人に対して保育士1人が必要です。
B型:A型とC型(家庭的保育事業)の中間的な形態で、職員のうち半数以上が保育士であれば良いとされています。保育士以外の職員も、保健師や看護師など資格を有する者1名を保育士として数えることができます。配置基準はA型と同様に、認可保育園の基準よりも1名多く職員を配置し、少人数でのきめ細やかな保育が提供できるようになっています。また、保育士以外の職員には研修が行われ、保育の質を確保しています。
配置基準
0~2歳児の保育士配置基準は、通常の保育所の配置基準に対してさらに1名の保育士を追加する形で設定されています。
0歳児:3名の園児に対して、保育所の配置基準に加えて1名の保育士が配置されます。
1歳児:6名の園児に対して、保育所の配置基準に加えて1名の保育士が配置されます。
2歳児:6名の園児に対して、保育所の配置基準に加えて1名の保育士が配置されます。
地域型保育事業 小規模保育事業 C型
地域型保育事業 小規模保育事業 C型 とは
小規模保育事業C型は、家庭的保育(グループ型小規模保育)に近い形態で、職員には保育士資格は必須ではありません。ただし、市町村が行う研修を修了した「家庭的保育者」でなければならず、保育士と同等またはそれ以上の知識と経験を持つことが求められています。
配置基準
0~2歳児の小規模保育では、家庭的保育者の配置基準が以下のように定められています。
0~2歳児が3名の場合、家庭的保育者1名が配置されます。
0~2歳児が5名の場合、家庭的保育者2名が必要となり、そのうち1名は補助者として配置することが可能です。
家庭的保育事業
家庭的保育事業とは
家庭的保育事業は、0~2歳児を対象に、少人数で家庭的な環境で保育を行う施設で、定員は5名以下です。保育は保育者の自宅やマンションの一室など、家庭の雰囲気に近い場所で行われ、待機児童の解消や地域の保育基盤の維持を目的としています。この事業は、2016年に「子ども・子育て支援新制度」の一環として創設され、地域型保育事業として自治体の認可を受けています。
家庭的保育事業は「保育ママ制度」とも呼ばれ、自治体からの補助金が交付されるほか、園児の選考や配置も自治体が管理します。また、配置基準は小規模保育事業C型と同様で、少人数のためきめ細やかな保育が可能であることが特徴です。
配置基準
小規模保育事業の配置基準は以下の通りです。
0~2歳児3人に対して家庭的保育者1名を配置
補助者を配置する場合、0~2歳児5人に対して保育者2名(家庭的保育者1名+家庭的保育補助者1名)を配置
事業所内保育事業
事業所内保育事業とは
事業所内保育事業は、企業や病院などの事業所が従業員のために設置する保育施設で、2015年に「子ども・子育て支援新制度」に基づいて自治体から認可を受けた地域型保育事業の一つです。この事業は従業員の子どもを対象にしながらも、地域の保育ニーズに応え、保育が必要な地域の子どもも受け入れる仕組みを持っています。
事業所内保育事業の主な目的は、従業員が仕事と子育てを両立しやすくすることで、企業の働き方支援に貢献することです。また、地域の待機児童問題の解消や、人口減少地域での子育て支援の強化にもつながるとされています。なお、自治体の認可事業であるため、募集の有無や補助金の内容は自治体によって異なります。
配置基準
子どもの定員に応じて以下のように異なります。
定員19名以下の場合
0歳児3人に対して保育士1人+さらに1名の保育従事者
1~2歳児6人に対して保育士1人+さらに1名の保育従事者
定員20名以上の場合
認可保育所と同様の配置基準が適用されます。
0歳児3人に対して保育士1人
1~2歳児6人に対して保育士1人
居宅訪問型保育事業
居宅訪問型保育事業とは
居宅訪問型保育事業は、保育を必要とする家庭の自宅で、1対1の保育を提供する地域型保育事業の一つです。このサービスを提供する家庭的保育者は、必要な研修を修了し、保育士と同等以上の知識や経験を自治体から認められた人でなければなりません。
対象は原則として3歳未満の乳幼児で、市町村長が以下のいずれかの理由で認定した場合に限られます。
・障害や疾病などで集団保育が困難な場合
・保育所の閉鎖などで他の保育施設が利用できない場合
・市町村による入所措置の対象となるが、保育の利用が困難な場合
・ひとり親家庭で、保護者が夜間・深夜勤務をしており、家庭状況を考慮して必要とされる場合
・離島など他の地域型保育事業が確保できない地域に住んでいる場合
この事業は、2015年の「子ども・子育て支援新制度」により認可され、公的給付の対象とされています。
配置基準
配置基準は以下の通りです。
0~2歳児1人に対し、保育者1人
配置比率:1:1
乳幼児1人につき保育者1人が配置されます。
時間帯別の配置基準
保育施設では、朝夕の児童数が少ない時間帯や、延長保育において配置基準が一部緩和されています。主なポイントは以下の通りです。
1. 朝夕の少数児童時間帯の配置緩和(94条)
– 児童が少ない朝夕の時間帯には、保育士2名の配置要件が緩和され、1名は子育て支援員に代替可能です。
– 子育て支援員は自治体の研修を修了し、保育士と同等の知識と経験を認められた者が担当できます。
2. 延長保育の配置緩和(96条)
– 8時間以上開所する施設では、延長保育時間においても保育士の代わりに子育て支援員を配置できるため、スタッフの負担が軽減されます。
3. 幼稚園教諭・小学校教諭等の活用(95条)
– 保育士に代わり、幼稚園教諭や小学校教諭も活用可能です(幼稚園教諭は3歳以上児、小学校教諭は5歳児が対象)。
4. 配置基準の総合特例(97条)
– 上記の特例適用にあたり、保育施設では保育士を全体の2/3以上配置することが条件です。残りの1/3以内であれば、子育て支援員など保育士資格を持たない者も配置可能です。
配置基準は自治体によって異なる場合がある
保育施設の配置基準は、自治体ごとに異なる場合があり、国の基準よりも厳しい独自の基準を設けている地域もあります。
※国の基準は2024年10月1日に施行されたばかりのため、現在国の基準より緩い自治体も今後国の基準に合わせて変更になることが予想されます。
参考(国の基準):児童福祉施設の設備及び運営に関する基準
千葉市
0歳児:3人に対して保育士1人(国と同基準)
1~2歳児:6人に対して保育士1人(国と同基準)
3歳児:20人に対して保育士1人(国の基準は15:1)
4歳以上:30人に対して保育士1人(国の基準は25:1)
※1施設あたり保育士数が2名未満になることは不可
横浜市(私立保育園)
0歳児:3人に対して保育士1人(国と同基準)
1歳児:4人に対して保育士1人(国の基準は6:1)
2歳児:5人に対して保育士1人(国の基準は6:1)
3歳児:15人に対して保育士1人(国と同基準)
4~5歳児:24人に対して保育士1人(国の基準は25:1)
京都市
0歳児:3人に対して保育士1人(国と同基準)
1歳児:5人に対して保育士1人(国の基準は6:1)
2歳児:6人に対して保育士1人(国と同基準)
3歳児:15人に対して保育士1人(国と同基準)
4歳児:20人に対して保育士1人(国の基準は25:1)
5歳児:25人に対して保育士1人(国と同基準)
配置基準の計算方法
配置基準の計算方法
1. 自治体の配置基準を確認
– まず、園がある自治体の独自の配置基準を確認します。もし独自基準がない場合、国の配置基準が適用されます。
2. 園児の年齢別人数を確認
– 年齢ごとに園児の数を確認し、必要な人数を把握します。
3. 年齢別に人数を配置基準で割る
– 各年齢の園児数を配置基準で割り、必要な保育士の人数を計算します(例では国の基準を使用)。
– 例として、定員を以下のように設定し、計算します:
– 0歳児:6人 → 6 ÷ 3 → 保育士2人
– 1歳児:17人 → 17 ÷ 6 → 保育士3人
– 2歳児:17人 → 17 ÷ 6 → 保育士3人
– 3歳児:20人 → 20 ÷ 15 → 保育士1人
– 4歳児:30人 → 30 ÷ 25 → 保育士2人
– 5歳児:30人 → 30 ÷ 25 → 保育士2人
– 計算結果を合計すると、定員120名の場合は13名の保育士が必要となります。
– ※小数点以下の処理は自治体によって異なるため、詳細は自治体に確認が必要です(ここでは四捨五入しています)。
4. 延長保育に必要な保育士の追加
– 上記の人数は日中の基本配置で、延長保育がある場合はさらに保育士を追加します。朝・夕の延長時間には少なくとも2名の保育士が必要になるため、状況に応じて追加配置を検討します。
保育士のカウントの方法(保育士1とカウントするルール)
常勤保育士
常勤保育士
常勤保育士としてカウントされるためには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
・月に120時間以上勤務している
・1日6時間以上、かつ月に20日以上勤務している
上記の条件に該当する短時間勤務の保育士も、最低基準上は常勤としてカウント可能です。ただし、公定価格の算定では、短時間勤務者は常勤換算を行う必要があります。
出典:保育所等における短時間勤務の保育士の取扱いについて
出典:こども家庭庁「保育所等における常勤保育士及び短時間保育士の定義について(通知)」
出典:「公定価格に関するFAQ(Ver.25)No.220」
非常勤保育士
保育施設では、非常勤の保育士も配置基準に含めることができます。その際は、非常勤保育士の勤務時間を常勤換算値として計算します。計算式は以下の通りです。
常勤換算値 = 非常勤保育士の1か月の勤務時間の合計 ÷ 常勤保育士の1か月の勤務時間(施設の就業規則等で定められた時間)
例えば、常勤職員の1か月の勤務時間が160時間とされている施設で、非常勤保育士が80時間勤務する場合、計算は以下のようになります。
80時間 ÷ 160時間 = 0.5
この場合、非常勤保育士は常勤0.5人分としてカウントされます。ただし、1人当たりの上限は1.0人です。
出典:こども家庭庁「保育所等における常勤保育士及び短時間保育士の定義について(通知)」
出典:「公定価格に関するFAQ(Ver.25)No.227」
配置基準見直しになった背景について
2023年4月に子ども家庭庁が設置され、少子化対策の一環として「こども・子育て支援加速化プラン」が発表されました。このプランに基づき、保育士の配置基準の見直しが行われています。背景には、保育現場での事故や不適切な対応が相次ぎ、保護者や保育関係者から「従来の基準では子どもたちに十分な安全と安心が確保されない」という声が上がり続けてきたことが挙げられます。
配置基準の変更点としては、以下のような改善が図られました:
4・5歳児:保育士1人当たりの担当人数を従来の30人から25人に変更
3歳児:補助金を増額して対応し、2023年度から1人当たりの人数を20人から15人に変更
1歳児:2025年度から6人に対して1人の保育士から、5人に対して1人に変更予定
保護者や保育士が組織する団体は、配置基準の改善を求めてシンポジウムや街頭活動、SNSでの発信を行い、共感を広げてきました。これらの声を受けて、早急な体制整備が求められるとして基準の見直しが決定されました。
まとめ
保育施設における保育士の配置基準は、子どもの安全と保育の質を確保するために設けられています。基準は自治体によって異なり、国の基準よりも厳しい独自の基準を設定している地域もあります。例えば、横浜市や京都市では国の基準を超える手厚い配置を実施しています。2023年に設立された子ども家庭庁が、少子化対策として「こども・子育て支援加速化プラン」を発表し、4・5歳児の基準を30人から25人、3歳児を20人から15人と見直しました。非常勤保育士や子育て支援員の活用も進められ、時間帯や人員確保の柔軟性が高められています。保護者や保育士の声が反映され、より安心できる保育環境の整備が図られています。